春恋
黒崎はあたふたする愛美を見て懐かしそうに笑った
「フフッ………」
「へ?」
真っ赤になりながら説明する愛美は黒崎を見上げる
「では、御一緒しても…?」
目線の先には愛美の目の前にあった一人がけ用のソファー。
「ど、どうぞ。」
「失礼致します。」
「質問して、良いですか…?」
「はい。こうして愛美様とお話しする機会は初めてですからね。」
愛美は不思議で仕方なかった。
自分がなぜ今、叔母の家に行く事になったのか。
降り積もる雪のように愛美には疑問がたくさんあった。
まずは、少女の生い立ちを軽く説明しなければならない。
林愛美は物心ついたときから、マリア施設園という施設にいた。
父親も母親の名前、顔、思い出。何も知らなかった。
マリア施設園は田舎の方にあり、山や川に囲まれた場所にあった。幼い頃から大自然と共に生きてきた愛美
だが、施設には必ず出会い、別れがあった。
里親が月に3回。見学をするようになっていた。
もちろん、愛美も何回か里親になる人の家に行ったりしていたが上手に関係が作れず軽いお泊り会だけで終わってしまった。
そうしていくうちに、中学に上がり。高校へと進んでいった。
華の幼少期。と呼ばれる程、幼い子供が里親の元に巣立っていった。
可愛いうちが売れ時なんだよ。といつかお世話してくれた先輩が言っていたのを最近になって思い出した。
そろそろ施設を出ようとしていたとき、自分の叔母だと言い出した人間がいると先生から聞いた。
今まで親戚だと言って来た人間はひとりもいない、なぜ今になって……?
疑問だらけだった。
だけど、少女は知りたいことがあった。
自分の両親を。
その日、初めて会った
西園寺美鈴と、執事の黒崎に。