春恋
まだ紅葉が始まったばかりの裏山にもみじ狩りと言って施設のチビたちと遊びに行った9月半ば
「めぐちゃん、まだだねー」
「ねー、」
「もうすぐって園長先生言っていたのにねぇ、」
チビたちは真っ赤になった葉を新しく来る里親さんにあげるんだ!と張り切っていたのだが、まだまだ。紅葉のこの字も見えない
「仕方ないね、この辺でお弁当にしましょ。」
ガッカリするチビたちの気を紛らわそうと持っていたお弁当をチラリと見せる
「あ!私たこーっ!」
「たこはぼくだ!」
「あたしたまごー!」
わさわさと持ってきたシートを広げたチビたち。
愛美もその光景を見て微笑んだ
重箱に入った4人分のおかずやおにぎりは色とりどり。
愛美が朝から張り切って作ったお弁当だった。
「「「ワァアア!」」」
リクエスト通りのタコさんウィンナー、だし巻き卵
唐揚げにおにぎりはみんな大好きなふりかけをまぶした。
パクパクと美味しそうに食べるチビたちを見て愛美も食べた。いつかきっと、自分の子どもとピクニックへ行こう。お弁当持って、パパが昼寝なんかして。
幼い頃から思い描いていた夢
それはいつ叶えられるだろう、
そう考えていたときだった。
「愛美!」
「あ、桜。どうしたの?」
いつも冷静な同じ年の桜が慌ててこちらへ向かってきた。