春恋

「あんたに、会いたい人がいるって!」

「え、」

今更?というのが本音だった。
高校になり、里親よりもこのマリア施設園を出ていくことを考えていた。
「めぐちゃん、よかったねー!」

単純に喜ぶ子どもたちに愛美は苦笑いするしかなかった。


桜に全員をお願いして、施設に戻る。





そこから、トントン拍子で話は終わっていく。


施設の前には高級車、
入ると、先生たちが慌てて園長室へと押し入れた。

「っ、愛美ちゃん!」

目の前にいた女性が目を潤ませて立ち上がった。

隣には、黒い男もいた。


何がなんたまかわからないけど、とにかく今まで以上に落ち着いている自分。
園長先生が淡々と引渡しの注意事項を話す。
女性は嬉しそうにその話を聞いていた。
隣に一応座ったが未だに他人事のようだった。


それから、いくつか質問されたが適当な答えを言っていく。

この際だから、と半ば諦めていた。
拒否して残ることもできた、
残ってなにがしたいかなんてわからなかったし、今通っている学校では軽いイジメもうけてきた。


何もかもに疲れていた。






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