春恋
西園寺家には兄妹がいた。
兄、西園寺真嗣
妹、西園寺美鈴
兄には恋焦がれた人物がいた。
林真唯
美鈴と同級生だった彼女はもともと体が弱く、入退院を繰り返していた。
真唯は華やかな容姿ではないが肌が白く目がクリクリと大きい可愛らしい人物
小さなことでも喜び、美鈴、私幸せ。と微笑んだ
そんな彼女を兄妹はとても可愛がった
真唯が高校へ通って3年になろうとしたとき、彼女は妊娠してしまった。
間違いなく兄の子どもらしい。
その頃兄は大学を卒業し、父の会社に入社したばかりだった。
兄も真唯が妊娠したことに喜んだ
だけど、父と母が許さなかった。
とんだふしだらな娘だ
汚らわしい
本当に真嗣の子どもか
だれでもヤルんだろう
など、汚い言葉を浴びせられた
真唯は表では謝り、結婚できるように。と頭を下げた
兄も同じように毎日、毎日父と母を説得したがなかなか聞き入れてもらえなかった
そうこうしてるうちに、 真唯が産気づいた
「美鈴ちゃ、いたいっ、」
「え、うそ、だってまだ期間が」
「いやあ!美鈴ちゃ、ん。ワタ、私はいいから。この子は……この子は、ああああっ!」
もともと体が弱い真唯。
産婦人科から下ろすようにとも言われていたらしい。
そんなこと、初めて知ったのは愛美が生まれて真唯が天国に逝った日だった
早産に真唯が絶えられなかったの。
と、兄には伝えた。
兄は悲しみにくれた。
そうしていくうちに、兄、真嗣は引きこもり誰とも話さなくなった。
美鈴は変わりゆく兄への姿、まだ孫だと認めない両親
このままでは愛美が危ないと悟った美鈴は誰も知らない、できればのびのびと暮らして行ける環境へと預けることにした。
美鈴様が泣きじゃくる貴女があまりにも可哀想だと決断をにぶらせましたので、私が代わりに貴女を………」