春恋
「あの、じゃあ父は……」
「先月、真唯様の元へ。」
「そう。ですか。」
シン、と静まり返る部屋
こんなに部屋って広いっけ。ちょっと寒いかな。あー、なんかぼやける。
愛美の頭の中は混乱していた。
「愛美様。」
「………はい」
「泣いてください。私が言うのも間違っているかもしれませんが。貴女の顔を見た瞬間に謝らなくては…と思っていました。
申し訳ございません。
あのとき、あのときに私が引き取ると美鈴様にお伝えしていれば、」
「やめてください。私は知れただけで良かったです。」
良かったんです。と小さくつぶやいた愛美は泣きも笑いもしなかった。