ミルクティー
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『うう…』
泣いていた私を見て。
見兼ねた昂が突然走り出した。
『っちょっと待ってろ!』
『た、かし?』
よくわからずに待っていると。
『…っはい、これ』
『え…?』
『やる。だから、元気出せよ。』
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あの日、昂がくれた缶のミルクティー。
大切な思い出。
あれ以来、私が落ち込んでいると、昂は決まってこれをくれた。
昂がくれるミルクティーの味は、少しムラが有って、うっすら缶の味がして。
でも、懐かしい。
「…ありがとう。」
昂のこと裏切ったのに、そばにいてくれて。
もう一度言ったその言葉は、自分でもわかるくらい、掠れてた。
ありがとうって言ったけど、それだけじゃない。
─ごめん。
「やっぱり、昂が正しかった。
結局昂の言う通りになって、なんか、私惨めだね。」
昂は、まだ街の方を見ながら、
「だから言ったろ?」
と、少しだけ苦しそうに言ったあと、自分で買ったミルクティーのプルタブを開けた。