ミルクティー
あれは、夏休み前のことだった。
こんな暑い日に、渡り廊下に呼び出すなんてどんなバカ女なんだ、なんて心の中で悪態をつきつつ手紙に書かれた場所に向かった。
─────…
とはいえ、俺が自分の顔を潰すようなことができるわけもなく。
「ごめんね、待ったかな?」
なんて王子様スマイル(自分で言うのも寒いけど)を浮かべていた。
「あ、いえ!!
こちらこそ、暑い中呼び出してしまってすみません」
あ、自覚はあったんだ。
冷めた心地で女子を眺める。
上履きからして、一年。
身長は平均以下で、小動物系。
可愛いかと聞かれれば、まあまあ可愛い。
だけど正直、興味なんて毛ほども湧いていなかった。
「それで、なんの用事かな?」
緊張した面持ちで顔を上げ、彼女は思っていた通りの言葉を紡いだ。
「あの、私、水野杏里って言います…!!
先輩のこと、入学式の時から好きです!!
付き合って下さい…」
まあ、最近ご無沙汰だったし…
いつもの手でいけば、こいつも簡単に落ちるだろ。
「…いいよ!」
(お前の描く"狩野秋人"なんて、どこにも居ねぇんだよ。)
この時俺は、水野さんのことも、今までの女たちと一緒だと思っていたんだ。