ミルクティー
幼なじみとわざわざ名乗るあたり、明らかな俺への敵意が見える。
よくある、ありがちな展開。
どうせ、俺は認めない!みたいなことでも言われるんだろう。
そう、たかをくくっていたのだが。
「…杏は、本当に純粋なやつなんで。」
真っ直ぐ俺を見据えた瞳には、迷いは一切感じられなかった。
「…はあ。」
返事なのかよくわからない返しをして、先に目をそらしたのは俺の方。
水野杏里が真っ直ぐだという目の前の彼も、また真っ直ぐな人間だ。
…こういうタイプとは、とことん合わない。
「夢見がちなところあるし、結構めんどくさいけど、」
言葉が途切れたと思ったら、目をぎゅっと閉じ、そして俺を見た。
「杏を、よろしくお願いします。」
俺と合ったその目は。
寂しさも、嫉妬も、苦しさも隠せていなかった。
じりじりと、俺の身が焼き尽くされるような思いがした。
そして、全く気に止めていなかった水野杏里という存在が初めて気になった。
目の前の男に、これほどまでに思われる彼女のことを。