ミルクティー
「格好いいと、思ったからです。」
「…」
合った目は、真っ直ぐ俺に突き刺さってくる。
答えがあまりにもストレートで、すぐに言葉が出てこなかった。
「あ、の、その、なんていうか、ビビっと来たっていうか…」
「…それだけ?」
この子はアホなのか?
水野さんはまた考えて、同じ目をする。
「それだけ、です。」
「なーんだ」
「それだけじゃ理由になりませんか?」
「え?」
「そりゃ、理由付けは色々できるけど、それは影から見てた私の中の先輩で、目の前の狩野先輩じゃないし」
「…」
「それに、人を好きになるのに、特別な理由ってないと思います。」
「…そっか、ありがとう」
はじめての、感情が。
真っ黒な俺の胸に飛び込んできた。
目も合わせられずにごまかしたようなありがとう。
それにすら笑顔を見せて。
落としてやろうなんて、とんでもなかった。
この子の言葉が、目が。
俺の真っ黒でどろどろとしたものを浄化してくれるような気がした。
それと同時に、汚しちゃいけない、とも。
それでも思わずにはいられなかった。
この日から俺は
飲めないブラックコーヒーを薄めてくれる、清らかな水を、求めてしまったのだ。