ミルクティー
消せない黒
それから数日後。
段々と登下校も慣れてきた様子の水野さんは、どうやら大分話好きのようであることがわかってきた。
正直、俺はうるさいのは苦手だったのだが、何故か彼女の話だけは苦痛にならなかった。
…1つを除いて。
「最近朝起きるのが辛くて。」
「はは、DVDの観すぎじゃないの?」
「なんで分かったんですか!?」
「何となくね」
「昂に借りっぱなしだった…あ、幼馴染ですけど、まだ観てなくて。観たらつい面白くて、夜通し観ちゃうんですよ。」
あの幼馴染くん。
話を聞いていると、彼がどれだけ水野さんの人生に染み付いているのか、いやでも考えさせられた。
…普通、仮にも彼氏の前で、他の男の話をするか?
本人は意識せずに話しているのだから、たちがわるい。
何かが、自分のなかで熱を持ち始めるのを感じた。
「先輩?」
「ねえ、」
「何ですか?」
─こうして俺は、幼馴染の名前が出るたび、"小さなお願い"をするようになった。