ミルクティー
◇缶入りミルクティー◇
思い出の丘に
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あれは小学六年生の頃のことだった。
うちは両親の仲があまりよくなく、ケンカがしょっちゅう起こっていた。
思春期に近づくこの時期、両親の怒鳴り声に限界がきて、私は家を飛び出した。
ちょうどこの寒い夜、もうすぐ冬休みが終わる。
メールをすれば、友達の多くは家族旅行。皆楽しそうな写メを送ってきた。
皆決まってこう返してくる。
『杏里はどこか行ったの?』
今思えば、彼女たちは純粋に知りたかっただけだと分かる。
でもその頃の私は、どうしても周りが自分をバカにしているような気がしてならなかった。
私の家なんか、どこかに出掛けるどころか、ケンカしか起こらずこのまま母親は出ていきそうな勢いだ。
「…帰りたくないな。」
真冬の夜。
身も心も凍りつきそうな鋭い寒さのなか、それでも私は家に帰りたくなかった。
──その時、ふと思いついて足を運んだのが、幼稚園の頃幼馴染みとよくきた丘の公園だった。