オレンジ色
「教えられない理由があるのか?」

「別に。」

 向こうのが絶対頭いいんだし口じゃ勝てないのはわかってても、だからこそ反抗したくなってしまう。でも、隠す自分も理解できなくてイライラした。


「信也。」

 結局教えることにした。

「星崎信也…ね。いい名前じゃん。」

 感想なんかどうでもいい。

「そっちは?」

 教えたんだから、名乗れ。

「祐也。」

 対抗されてるのか?

「上は?」

「必要あるの?」

 ムカつく。すげえイライラする。これがおぼっちゃまの手口かよ。

「はは、冗談だよ。そんなムッとするなよガキだな。友清。」

「・・・は?トモ…トモ何?」

「トモキヨ。友達の“友”に清い。よく珍しいって言われる。」

 友達の友に清いだ?お前のどこが友達に清いってんだ。人を付き合いぐらいにしか考えてないようなヤツに全然ふさわしくない苗字だな。



「じゃ、俺帰る。」

 突然ベンチを立った俺に少なからず動揺したのか一緒に立った。

「ちょっと待てよ星崎。」

 ほら、やっぱり。

「星崎って呼ぶなら下の名前意味なかったじゃん。じゃあな。」

 聞いたからには呼ばなければ意味がない。

 友達同士になって、仲良くなって、それで下の名前を必要とするケースがおそらく一番多いに違いない。
そう、最初からこいつに下の名前教える必要なんか、なかったんだ。


 失敗した。


 特に追いかけてくる様子もなく、また俺は一人町を歩いた。

さっきまで楽しかったはずのウィンドウショッピングも、おいしいはずのFFの味も、どこか味気なくて、仕方なく帰ることにした。


 全部あいつのせいだ。



 全部、祐也のせいだ。
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