オレンジ色
 相沢とカズが、話してる。俺はそれを背中で聞いてる。

一件いつもと変わらない風景。クラスの奴らもひやかすことなく流してるあたり、誰が見ても自然な光景そのものなんだろうな。

 でも、昨日俺はカズの気持ちを聞いてしまった。

ただ変わったのはそれだけなのに、なぜか相沢とカズがしゃべってるその光景が暖かく見える。周りにピンクのイメージ背景でも付いてそうな、そんな雰囲気。

「なぁ、シンっ、シンっ…!」

 相沢と話が終わったカズが俺の背中を激しく叩いた。

「いっ、痛いよ。何、どうしたの。」

 振り返るといつもの数倍の笑顔を浮かべるカズの顔が飛び込んで来た。

「今度一緒に出かけようって、相沢が…!」

 口に手を寄せて小声でそう言って来たカズの言葉に目を見開いてしまった。

俺がカズの気持ちを聞いたのは昨日だからなんだろうけど、こうも早く事が発展してしまうと驚く他ない。

「何、お前、言ったのか?」

 俺の質問にさっきまで笑顔だったカズの顔が少し曇り、横に首を振った。

「なんつーか、成り行きなんだけど。ほら、駅前にうまいクレープ屋出来たじゃん?
 食べたいって言うから、次の日曜に一緒に食いに行こうぜって話。」

「学校帰りでもいいんじゃないか?」

「それじゃムードないだろ。」

 冗談で言った言葉にマジで返されて、返す言葉がなくなった。

 やっぱり二人きりっていう特別な空間にいることが重要なんだろうな。

 そう、だよな。好きな人とは二人でいたいって思うものだ。


 好きな人とは二人きりでいたい…?


 あいつに、そんなことは思ったことは、ないな。
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