オレンジ色
「シン?」


 カズの声で現実に戻った。


 どうしてだ。どうしてここであいつが出て来るんだ。


「お前最近突然ボーッとすることあるけど、どうかしたのか?」

「ん、ちょっと寝不足気味かも。頭が働かないんだ。」

 咄嗟の嘘を、カズなら見破っただろうな。

「そっか。夜ぐらいちゃんと寝ないとダメだぞ。午後の授業まで持たなくなる。」

 冗談でそんなことを言ったカズが小声で「夜寝ても、午後の授業は寝るけどね」と付け加えた。俺も午後の授業は何をやっても寝る。



 はずなのに。



 ここ最近、午後になると下校のことを考える。

 なぜかその下校風景の中には、いつも、祐也がいる。
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