オレンジ色
 当たり前に時間が過ぎて、校門を出た。

いつもと変わらない風景。今日もカズは用事があるらしく、一人ぼっちの下校。

 こういう時、カズと一緒にいたいなって思うのに、なぜかそれは恋愛じゃない。

友達と恋人って何が違うんだろう。一緒にいてドキドキすること?だったら、どうしてドキドキするんだろう。キスしたいって思うこと?じゃ、どうしてキスしたいなんて思うんだろう。

 何度考えても、答えなんか見つからないのはわかってるのに。

同じことばかりを問いかけながら、歩いた。



「シン!」

 とぼとぼと下を向いて歩く俺に、誰かが声をかけた。

 もしかしたらカズが用事終わって追いかけてきてくれたのかもしれない。

そう思って、足を止めて、まだ遠い、声のする方を向いた。ら。



「ゆ…うや…」



 瞬間、俺が硬直した。


「はぁ、よかった。さっきまでここで待っていたんだけど、なかなか来ないから、ちょっと向こうの文房具屋まで行ってたところだったんだ。すれ違わなくてよかった。」


待ってた…?誰を?何を?


「昨日、何か様子がおかしかったから、気になってて。」

 昨日…?俺が、走り出したこと、だ。

「別に・・・彼女と一緒だったから、その、邪魔しちゃいけないと思って。」

 嘘しか、浮かばなかった。

「全然邪魔なんかじゃないよ。」

「そう、だったらよかった。」

 まともに顔が見ていられなくて、顔を背けた。

「あ、そうだ。よかったらどこかでゆっくり話さない?」

 突然の誘いに驚いて、また祐也を見た。動揺するほどの、綺麗な笑顔。

「な…何で俺が、お前なんかと・・・」

 強く反抗することも出来なくなって、ただ、心臓だけ痛かった。

「もし、用事がなかったら、駅前まで行かない?クレープ食べようよ。」

「え、・・・はい。」

「よし、決まり。じゃ、行こう。」

 強引に腕を引っ張られて、来た道を戻らされているのに。



 どうして嬉しいとか思うんだ。心が、壊れてる。
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