オレンジ色
「今日は、友達一緒じゃないんだね。」

 友達、というのは、カズのことだろうな。

「ん。用事があるって言うから、先に帰ってきた。」

「そう。」

「そっちこそ。」

「ん?」

「今日は彼女一緒じゃないんだね。」

 意地悪くそう言ってやったのに、表情も変えることなく。

「いつも一緒にいるわけじゃないよ。」

 優しく返された。

 今なら、聞けるかもしれない。何て言えばいいんだろう。

なるべく、気にさせない言い方を、国語が不得意な頭で考えた。


でも結局何も浮かばなくて。

「どっちから告白して付き合ってんの?」

 直接聞いてしまった。

「向こうから。」

 平然と言われて、「ふぅん」だけ、返した。

自分がモテるっていう自慢をしてるのかと思ったけど、そう言わせたのは俺だ。何も言えなくて、黙った。

「付き合ってるって言っても、そろそろ終わりだよ。」

「そろそろって?」

「試験期間。3ヶ月付き合ってって言われたから、そうしてるだけ。」

 試験、期間?ということは、祐也は彼女のことは好きでも何でもないっていうことなんだろうか?でも、嫌いな奴とだったら、たとえ3ヶ月でも付き合わないと思うし、やっぱり祐也も彼女のことが好きなんだろうか。


 気になって、気になって、気になって、気になったから、聞くのはやめた。


「いい子なんだけどね。」

 最後に一言そう付け加えた祐也の言葉。

その場合の“いい子”っていうのは、かわ“いい子”?どうでも“いい子”?

「あっそ。」

 やっぱり、祐也がひどい男に見えてきて、クレープ屋を覗きこんだ。

ちょうど10人ぐらいの団体が帰るところみたいで、そうしたら俺たちも店に入れそうな感じだ。


「シンが聞いておいて、“あっそ”はないでしょう。」


 それに得に返答もしないで、ポケットに手を突っ込んだ。
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