オレンジ色
「シンは無口?それとも俺が嫌い?」

「どっちも。」

 自然に出てきた言葉に、自分で口をふさいだ。



 どうしてだ・・・?好きな、はずだろ・・・?



「・・・シン?どうかした?気持ち悪い?」

 突然口を押さえた俺に、そう言った祐也の声が頭に響く。


 わからない。恋って一体なんなんだ。


「別に、何でもない。席空いたみたいだな、入るぞ。」

 逃げるように店の中に入った。




 俺は生クリームとイチゴジャムのを頼んだ。なるべく甘くないのを選ぼうとしたけれど、当たり前ながら、どれも甘そうだった。食べられそうなのがこれしかなかった。

「イチゴ好きなの?」

 そう聞かれても。

「別にそういうわけじゃないけど。」

 ごまかすしかなかった。


 祐也のトレイに、俺のイチゴのと、祐也のチョコとバナナのクレープが、転がりそうになりながら並んでるのを、後ろから見ていた。

 あ、くっついた。また、離れた。

イチゴがバナナのに体当たりして、イチゴが負けた。転がりながら、今度はバナナのが追いかけて、イチゴにぶつかったけど、やっぱりバナナのが重いからか、イチゴが負けた。


 なんかムカつく。
 だんだん意地になってきた。


「席、ここでいい?」

 聞くために振り返った祐也が、俺の顔を見て、立ち止まった。

「何怒ってるの?」

「別に。そんなにイチゴが嫌いなのかと思って。」

 何を言ってるのかサッパリわからない顔をした祐也の隣を抜けて、席に座った。

「俺はイチゴ嫌いじゃないけど。」

 トレイを置いて席に座りながら、そんなことを言い出したから

「ふぅん、俺も別にバナナ嫌いじゃないよ。」

 苦笑いしながら返してやった。
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