オレンジ色
「本当においしいね、ここのクレープ。」

 満足そうに祐也が笑う。祐也が満足なら、それでいい気がして。

「だな。」

 おいしいとは思ってなかったけど、そう答えた。

「一度来てみたいって思ってたんだ。」

「彼女と来れば良かったのに。」

 彼女の話ばかりを出すのは良くないって思ってても、話題はそこに行きたがった。

「あの子連れてくるぐらいなら友達と来るよ。」

 それは、つまり。

「あんまり好きじゃないんだ?」

 なぜか心が弾んだ。

「好きだけど、恋愛じゃない。それに、あまり気を持たせたくないんだ。」

「それは別れることが決定だから?」

「心の傷は浅い方がいい。」

 祐也の顔が、クールなモテモテ男の顔に変わった気がして、ムッとした。


「いつ別れるの。」

 はみ出して来たイチゴのソースを舐めながら聞いたら。

「明後日。」

 少し笑いながら、そう祐也が答えた。

 こんなヤツ、彼女から嫌われてしまえばいいって、どうしてかそう思って。


「別れない方がいいと思うよ。」


 心にもない言葉が、俺の口から飛び出したのだった。
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