オレンジ色
「青春ドラマみたい。」


 突然後ろから聞こえた声。振り返って、目を伏せた。

「何してるの。」

「ボーっとしてるの。」

 そう答えて小さな溜息が漏れた。

俺の隣に移動してきた祐也が噴水に手を伸ばして、下から吹き出てくる水と遊び始めた。結構子供っぽいところもあるんだな。

 いつも堅そうで頭ばっかり良さそうで、女にモテそうで大人な雰囲気の祐也。

こうして子供っぽく遊ぶ祐也を知っているのは何人ぐらいだろう。

俺だけかな。いや、きっと彼女も知ってるだろう。友達にも見せてるのかな。


 考えて、腹が立ってきた。


「シンは彼女は作らないの。」

 しばらくの沈黙の後、出た言葉はそれだった。

「お前みたいにモテないだけ。」

 イヤミのつもりで言った言葉に、自分で悲しくなった。

でも、祐也は何も返事はしてくれなかった。それが余計俺を悲しくさせた。

「今までに付き合ったのって、何人ぐらい?」

 話題を少しそらすような物言いでそう聞かれて。

「2人。」

 素直に答えた。祐也には、嘘が付けない。

「どんな子?」

「それ、言ってどうなるんだよ。」

「別に、ただ気になっただけ。どんな子?」

 言いながら噴水で濡れた手を振って、水を払った。

「かわいい系と綺麗系」

 そんな言葉しか出てこなかった俺を見て、少し笑って、目線を下にずらした。

特に興味もなさそうに「そう。」とだけ言って、祐也は振り返ってフェンスによりかかった。

俺もそれの真似をして、フェンスに寄りかかった。


「お前は?」

 会話が続かなくて、質問を返した。

「今付き合ってる子が3人目」

 少し、祐也の表情が曇ったように見えた。言いたくなかったんだろうか。

だったらこれ以上聞くのは申し訳ない。


 俺は黙った。


俺が黙ったのを気にしたのか、祐也も黙った。


 一緒にいるのに、距離が遠くて後ろに重心をかけて、空を見上げた。
< 42 / 87 >

この作品をシェア

pagetop