オレンジ色
「ぁ・・・。オレンジ。」

「え?」

 言うつもりはなかったのに、つい口から出てしまった言葉に、祐也もつられて空を見上げたようだった。


「本当だ。」


 すぐ隣にいる祐也よりも、空の方が近いような気がしてくる、オレンジ。

こんなこと言い出したら引かれるだろうか、って思ったけど、やっぱり言ってみることにした。



「オレンジって、明るく見える?暗く見える?」



 突然の俺の質問に戸惑ったのか、祐也は俺を見て少し硬直し、また空を見上げた。

「明るい。」

「どうしてそう思うの。」

 感情のこもらない俺の言葉に。

「今はシンと一緒に見てるから、明るく見える。」



 俺の心が固まった。
 それってまるで…



「俺、もう帰る。じゃあな。」




 恋人同士みたいだ。




 何でもそういう方に考える自分に嫌気が差してきたのに、きっと祐也はそんなこと全然思ってないのに、勝手に想像してる自分に少し苛立った。

「ちょっと、シン、待てよ。俺商店街に用事あるから、途中まで一緒に行こう。」

 呼び止められて振り返って、立ち止まって。

 俺は今、どんな顔をしているんだろう。

「・・・シン?」


 涙が、出そうだった。


「行くぞ。」

 本当は、断りたかったのに。男友達だったら、“気分が乗らないから”ってまっすぐ帰ったはずなのに、まだ、離れたくなくて、でもそれを知られたくなくて、目を伏せて歩き出した。



「シンは?」

「え?」

「オレンジの空は、明るく見えるの、暗く見えるの。」


 歩きながら聞き返されて、もう一度空を見上げた。
 俺は。


「祐也と一緒に見てるから、明るいんじゃない。」


 そう答えたのだった。
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