オレンジ色
 風呂からあがってベッドに倒れ込んだ。

ちゃんと身体洗ってきたはずなのに、まだどこかから祐也のコロンの香りがする気がした。壁にかけた制服からだろうか。

 髪にふれた祐也の指。

 俺の腕をつかむ祐也の腕。

 俺に笑いかける笑顔も。

 楽しそうに笑うその瞳も。

 俺と一緒にいる時に祐也がしてくれること全部、それは俺の物だと思っていいのだろうか。祐也にそんな気がないことはわかってるけど、ただ、信じたかった。

 少しでも祐也が俺の物になって欲しいって願うのは自然なこと。

 でも、祐也だって俺の知らないとこで結婚でもするだろう。

きっと俺に向けてる笑顔の何百倍も眩しい笑顔をして、誰か、俺の知らない女の物になるんだろう。

 それを俺は、多分見ることはないんだろう。



「祐也…」


 天井に向かって名前をつぶやいたら、胸が苦しくなってきた。

 同時に身体が熱くなるのを感じた。

 こんな時に何を考えてるんだ俺は。

手をパジャマのズボンの中に滑り込ませて、熱くなったそこをさわってみる。


 バカだ。


男の身体を想像してこんな、なるなんておかしい。

でも、違うんだ。男の身体を想像してるわけじゃなくて、俺は祐也を想像してる。男が好きなわけじゃないんだ。

 祐也が好きなだけなんだ。
 手をズボンから出した。

祐也の顔を想像して、こんなことしても、むなしくなるだけだ。


「…ごめん。」


 その夜は、目を閉じてもなかなか寝ることができなかった。



 ただ、夢の中で、何度も祐也に謝る自分の姿を見ていた。
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