オレンジ色
「でも今時交換ノートだぜ?」

「だからいいんじゃないか。携帯とかメールとかじゃ一般的すぎだって」

 一般的、という言葉にピクッと反応した。


「一般的すぎて、こいつ俺のこと好きなのかな?でもな…って思うけど、交換ノートは相手にも了承してもらわないとできないことだろ。」

「そうだけど、向こうが言い出したんだし。」

 カズの言ってることはもっともだと思った。

 電話もメールも自分が相手に送りたいって思って勝手にやること。

一方的なことでしかないけど、交換ノートってそういう意味では違うかもしれない。

「向こうもお前に気があるんじゃないの?」

「まさか。男だぞ。」

 サンドイッチの袋をぐしゃぐしゃに丸めて、逃げるように立ち上がった。

祐也が俺を好きになる確率は、異常に低いと思う。


 俺は男で。
 祐也も男だ。


 考えてて変なむなしさがこみ上げてきて、サンドイッチのゴミをゴミ箱に投げ込んだ。あまり重さのないビニールのゴミは、ふわふわとゴミ箱に着地した。

「ガンバレよ。」

 食べ終わったカズがゴミ箱の前にいる俺の横まで来て、そう言った。


 カズの捨てたビニールと俺の捨てたビニールが、元の形に戻ろうと必死にもがいているのを横目に、俺は屋上を出た。
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