オレンジ色
 商店街の入り口を入ったところから、気になってあたりを見回した。


今日は、祐也はいないみたいだ。そう毎日逢えるっていうわけでもないし、期待したって仕方ないけど、でもやっぱり少し淋しい。


「でさー相沢が…シン?」

 ボーっとしてる俺に気づいたカズが心配そうな顔をした。

「あ…、それで、相沢がどうしたの。」

 俺の言葉を聞いて、心配そうだった顔がまた笑顔に変わって話しを再開させた。

半分上の空でその話を聞きながら、しつこいほど商店街のあちこちを見回した。


 やっぱりいない。


本屋の中は特に執拗に探したけど、やっぱり見つからない。


 今日は逢えないんだ。


考えると哀しくなるから、一生懸命にカズの話しを聞いた。

相沢の話とか、部活のこととか、数学の先生が嫌いだとか、どこにでもあるような学生の会話に、どこか安心する俺がいた。


 普通離れした恋愛をする俺と。
 普通の生活を楽しむカズと。


全然似てないようで、実は同じことで悩んでたり。

 だからカズといると安心するのかもしれない。

 そんなことを考えながら歩く商店街の空は、まだオレンジ色にはなりそうもない、真っ青で遠い空だった。
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