オレンジ色
郵便受けに見慣れない封筒を見つけた。

うちの住所も郵便番号も入ってない。

当然切手も貼ってない。

その上、星崎は漢字で書いてあるのに名前がひらがなだ。

「星崎しんや様」

封筒をひっくり返して、宛名を見ると、そこには。


見慣れない文字が並んでいた。
「友清祐也」。



 封筒を抱えて走って階段を上って部屋に入った。

鞄をベッドの上に投げつけて封筒を開けた。

封筒の大きさからして、多分これは間違いなく。

 紅褐色の表紙のリングノートが出てきた。

 急いでそのノートを開けようとして、ふと、気づいて手を止めた。

これは、これから俺たちが何回会ったかのカウントをするためのノートだったはずだ。祐也のヤツ、いきなりルール違反だ。

これじゃ何度会ったかのカウントなんかできない。


 俺は笑った。


何だかわからないけど、おかしくて笑いが止まらなくなった。

 きっと祐也はそんなこと全然気づいてないし、想い出しもしないんだと思うと、余計におかしくなって笑った。

 紅褐色のノートを開く。

 1ページ目には何も書いてない。
 もう一枚めくってみるとそこに、綺麗に並んだ文字が出てきた。

やっぱり顔の通り字まで綺麗なヤツなんだな。そのうえ辞書でも引かなきゃ読めなそうな漢字まで出てきてしまったら俺は困るぞ。


『祐也です。
 突然何かを書こうとしても何を書いたらいいのかわからないね。

 シンと初めて会った時はこんなに仲良くなれるって思ってなかった。』

 そんな出だしで始まってた一番始めの交換ノートを、教科書を見る俺とは正反対の俺が見ていた。目が離せなかった。

 ここまで真剣に字を読むことなんか、多分今までなかった。


 学校のことが書いてあった。彼女のことも書いてあった。


今どんな勉強してるのかも、校舎の雰囲気も、先生のことも、そこに書いてあることは、ほとんどが俺の知らない祐也だった。


 嬉しくて嬉しくて何度も読み返して、でもそのたび引っかかった。


 最後に書かれていた俺への質問。




『俺の顔はそんなにかっこよく見えるのかな。』
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