オレンジ色
「あれ?カズ君と星崎君!」



 右後方あたりから、いつもの聞き慣れた高い声。

 その声が聞こえると共に、俺の腕を振り払ってそっちに走って行くカズ。


「…友達?」

 不思議そうに俺に尋ねる祐也に。

「カズの思い人。」

 なんてイヤミすら出てきた。

「活発そうな子だね。」

「活発っていうかかなりうるさい。」

「シンの好みじゃないんだ?」

「俺はもっとおとなしい子がいい。」

 言いながら、わざと祐也の顔を見た。
 ずっとこちらを見ていた祐也と必然的に目が合って、そらした。

「ね、今からお茶しない?星崎君も一緒に。」

 突然相沢が歩み寄ってきて、俺に顔を近づけながらそう言った。

 相沢の後ろにいるカズに目を向けると。

「祐也さんも一緒にどうっすか。」

 更に追い打ちをかけるように祐也も。

「シンがいれば行きたいな。」

 この場全員が、とりあえず俺の敵だった。

 3対1の状態に置かれて、仕方なく。

「…で、どこ行くの。」

 できれば、祐也と他の誰かには仲良くなって欲しくなくて、できれば他の誰かを祐也には近づけたくなかった。


 俺だけのものにしたかった。
 俺だけ見てくれればそれでよかった。
 …俺ってわがままだ。


 先頭を歩き出した相沢の横にカズがいて、それを後ろからボーっと見てた俺の腕を、祐也が引っ張った。

 たったそれだけのことが無償に嬉しくて、嬉しくて。


 イヤなわけじゃないのに、イヤがってるフリをして、いつまでも祐也が腕を離さないように、そう願う自分がいた。
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