オレンジ色
 そんな俺の表情に気付いたのか、カズが慌てて俺の方に歩み寄って来て。

「あ、そっか。お前甘いのダメなんだっけ…別のとこにするか?」

「…いいよ、一応頼んで、食べれなかったらお前が食ってくれれば。」

「わかった。無理すんなよ。ダメそうだったらすぐ渡してくれていいから。」

 言い放って相沢の背中を押してカズが店内へ入っていった。

 俺も二人を追うように店内へ入ろうとした。けど、振り返ったら祐也が立ち止まったまま動かない。どうしたんだ?


「…おい、入るぞ。」

「甘いの、ダメだったんだね」


 あ。


「食べれなくはないけど。」

 祐也には、バレたくなかったかもしれない。

「言ってくれれば良かったのに」

 そう言われて。思わず。


「だって言ったらお前、」


 言おうとしたけど、続きは慌てて飲み込んだ。


 “だって言ったらお前、俺を誘ってくれなかったじゃないか”


「知らなかったとは言え、この間はクレープ屋なんか誘っちゃって、ごめん」

「謝るなよ。別に…言わなかった俺が悪いんだし」

 何とかフォローしようとしたけど、俺の頭じゃ何も浮かばない。

 もっと頭が良かったら良かったのに。

「いいから、カズ達待ってるし、早く行こう」

 今度は俺が苦しそうな表情の祐也の腕を引っ張って歩いた。


 別にそこまで落ち込まなくてもいいのに、知らなかったんだし。

 俺も言うつもりなんかなかったし。
 よくわからないけど。

 なぜか俺まで哀しくなってきた。



「ねぇ、祐也さんってもしかしてE高生ですよね??私立ってどうですか?」

 相沢の甲高い声が店内に響いた。

 そんなにでかい声で言わなくても普通に聞こえるのに。

 オレがうざったそうな顔をしていると、相沢の隣に座ってるカズと目が合って、手を縦にしておでこに当てて“ごめんな”のポーズをした。


 別にお前が謝ることないのに。


 クレープかじりながら机を囲んで。オレの隣には祐也がいる。前方には相沢がいるけど、それはどうでも良くて、出来れば前にはカズにいて欲しかったような気がする。
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