オレンジ色


 意味がわからないぞ。


「わ、運命なんて素敵ねー!」

「そっか、お前らって運命の出会いだったんだ?」

 騒ぎまくる相沢と、ニヤニヤしながらオレを見るカズが。

 敵に見える。

どっちも見ていたくなくて祐也の方を見ると、とぼけ顔の祐也と目が合った。

「こういうのは運命って、言わないのかな」

 どうやらそれが疑問だったみたいだ。

「運命、かもね」

 何度も、偶然何度も、色んなとこで出会えたこと。

「そうだよね、よかった」


 あれはきっと、運命だったに違いない。


 またいつもの綺麗すぎる笑顔に戻った祐也がクレープにかぶりついた。

その笑顔にオレは弱いんだと思う。女の子じゃないけど、心ときめく、ってヤツなんだと思う。一瞬にして上がった心拍数が苦しい。


 もっと近くに寄りたい。


 空き缶2つ分ぐらい空いた、祐也とオレの距離。


 近づいたら怒るだろうか。気持ち悪がられるだろうか。

 一度トイレに立って、次に座る時にもっと近くに座れば自然に見えるだろうか。



 色々考えたけど、どれも出来そうになかった。




「なあ、シン。ちょっと」

「え?」
 下を向いたままのオレにカズが声をかけたから、てっきりまた心配してクレープ食ってくれるって話かと思ったら、カズは席を立って小さくオレを手招きしてる。

「何」

 状況がつかめなくて聞き返したら。

「オレ便所の場所わかんねーから一緒に探して」

 その言葉で、どうやらオレにだけ話したいことがあるらしいと判断した。

「うん」

 返事だけしながらオレは席を立った。

 だけど。

「相沢と祐也だけ席に残すって、何かヤだな」

 カズにだけ聞こえるように言うと、

「相沢はどうかわからないけど、祐也さんはそんなに悪い人じゃないだろ」

 そう返されて、納得した。
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