オレンジ色
 商店街を抜けていつもの交差点まで辿り着いた。


いつもだったら笑ってこっちを向いてくれるはずの祐也が、立ち止まったまま動こうとしないから、オレも何も言えずに立ち止まった。


 今、お前は何を考えてるんだ…?


 何度かちらっと祐也の方を見たけど、祐也の目には、今は何も映っていないように見えた。いや、正しくは見えているのだろうけど、どこも見ようとしていないのかもしれない。

 そのまま時間が過ぎて行って、耐えきれずに口を開けたのはオレだった。

「あのさ」

「あ…何?」

 予想より早く返って来た返事。

 でも特別何かを言いたかったわけじゃないから、何を続ければいいのかわからなくなった。


「…どうか、した?」


 “彼女とはもう別れたのか?”
 “相沢と何があったんだ?”
 “何かイヤなことでもあったのか?”


 聞こうとした時に、もう一個聞きたいことが浮かんだ。



 “オレの事が嫌いか?”



「…オレ、こっちだから。じゃあ、またな」

 言えなかった。


 そのままオレは交差点を曲がって歩き出した。

今振り返ればまだ、祐也はそこにいる。今ならまだ引き返せる、って。そんなことが頭を通り過ぎて、消えた。


 振り返ったって、きっと聞けない。
 明日、相沢に聞けばいい。


 止めたかった足を、振り返りたかった体を無理矢理前に進ませて、オレはまた角を曲がった。
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