オレンジ色
『この間、カズ君や相沢さんと一緒にクレープを食べて楽しかったね。
 シンと相沢さんはとても気が合いそうに見えたよ。
 付き合ってみたらどうかな。絶対にうまく行くと思うよ』


 始めの3行で、今までオレが悩んでたこと全部、わかった気がした。

予想でしかないけれど、カズも言ってた。相沢はオレのこと好きなんじゃないかって。

祐也もそれを感じたのかもしれない。いや、もしかしたら相沢から言われたのかもしれない。


 それでオレを避けてたとしたら。


 え…?


 待って、何でそれで祐也がオレを避けるんだ?


 オレの予測は全部勘違いだったんだろうか。

勘違いだとするならば、どうして祐也がこんなこと書くんだろう?

 もしかして、まだ他に何か、相沢に言われたんだろうか。

 全部を読み終える前に、オレは教室に向かって走り出した。

「あれー?シン、早かったな。もう食い終わったのか?」

 教室でのんきにサンドウィッチをかじってるカズの腕を引っ張って、無理矢理屋上までつれて行った。何のことだか解っていないような顔のカズが、それでも、怒らずについて来てくれた。



「何だよ、急に」

「これ、これなんだけど、」

 さっき読んでいた文章を指さしながら、ノートをカズの目の前に押しつけた。

「な、何だよっこれが、どうかしたのか?」

「これ、どういう意味なのか、オレじゃわからないんだ」

 早口で言った俺の言葉に、カズが真剣にノートを眺め始めた。

「…いや、オレでもこれは意味わからないよ」

 とぼけた声でそう言われて、あからさまにガッカリな顔をしたオレに、カズが。

「でも、相沢がお前のこと好きなのは、さっき本人に確認してきたよ」

 表情を一つも変えずに、機械的にそうつぶやいたのだった。



 太陽が少し雲に隠れて、その色が濁って行った。
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