オレンジ色
カズと話してて、なんとなくわかった。

『シンと相沢さんはとても気が合いそうに見えたよ。
 付き合ってみたらどうかな。絶対にうまく行くと思うよ』


この言葉の真意。


相沢はあの日、多分祐也にオレのことが好きだって言ったんだろう。

それを真に受けた祐也は。

相沢の邪魔をしないようにと、オレを避けたんだろう。


何もしてないオレが、一番一緒にいたい人に避けられたんだ。


何も知らないオレが、一番一緒にいたい人を遠ざけたんだ。



 重い気持ちのまま放課後になった。

祐也とのノートはまだ書いてない。でも、ノートを書くより先にやらなきゃいけないことがある。

 ノートを書くよりも大事なこと。

 それは、ノートを書くために必要なことかもしれない。

「…相沢、ちょっといい?」

 声をかけると、少し驚いたような脅えたような顔を見せて、それでも相沢は鞄を持って席を立った。オレの視界の端の方に、こちらを見ているカズの姿があった。

 カズにも言ってない。

 相談しようと思ったけど、カズが相沢のこと好きなのわかってて、言う気にはなれなかった。


 だから、これはオレの、オレだけの勝負。


「…何?」

 使われてない教室の前の廊下。ここ数年、電気も付けることが無かったような場所で、女の子と二人っていうのも、何だか気持ちが落ち着かないな。

「えっと…昨日はごめん」

「あ、あははっ、私こそ、何か、泣いちゃったりしてごめんね~!」

 努めて明るく振る舞おうとしてるのか、笑顔が引きつってる。

 やっぱり昨日アレだけ傷つけておいて、オレに今度は何言われるのか不安なんだろうな。



 でも、ごめん。今日もオレは相沢を傷つける。
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