オレンジ色
 息を切らして商店街の入り口近くまで行った頃には、オレンジ色の空はもう消えてしまっていた。どこか心に喪失感を覚えながら、そこからはとぼとぼと歩いた。

 夢物語みたいにオレンジ色の空が祐也と会わせてくれるんじゃないかって、心躍らせてた自分がバカみたいだ。


 そんなこと、あるわけないのに。


「…あれ?」

 商店街の入り口。こっちを向いて手を振ってる奴がいる。

 周りを見回してみても、こんな時間にここを歩いているのはオレぐらいだ。


「おーい! シン! 遅いよ、お前!」


 微かに聞こえて来た声に耳を傾けたら、それはカズの声だとすぐにわかった。

 帰ったんじゃ、なかったのか…?

「帰ったんじゃなかったのか……よ」

 返事をしようとオレも叫んだ、そのカズの隣りに、E高の紺色の制服を着た奴がいる。


 祐也…?


「ほら、シン、ノート書いたか? さっさと出せよ」

 歩み寄って、心臓が止まりそうだったオレに、カズがそう言った。

「…やぁ。」

「…おっす」

 状況がよく飲み込めないけど、言われた通りにノートを鞄から出した。

「お前、帰りに相沢つかまえてるみたいだったから、祐也さん帰っちゃうかと思って止めといたんだかんな。感謝しろよな」

 祐也がノートを受け取っている間に、自慢げにカズがそう言った。

「相沢の方は大丈夫だったか?」

「あー…うん。多分」

 あんな言い方じゃどこまで相沢に伝わったかわからないから、曖昧な返事をした。

「そっか。じゃ、今度はこっちの誤解を解けよ」
「え?」

 カズが祐也を指さしながらそう言った。指さされた祐也は目を丸くしたまま動かない。

「誤解って…何?」

 状況がいまだ飲み込めないままの祐也を一度見てから、オレはカズに目を向けて小さくうなずいた。



「じゃ、オレ帰るよ」
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