オレンジ色
「なぁなぁ、ちょっといい?公立って女の子ってかわいいってホント?」


 言いながら肩を叩かれて。振り向く前に“そんなことないっす”なんてセリフを考えて。

 振り返った。


「別にそんなこと・・・・あれ?」
「・・・あ。」



 あの人だ。




 声をかけた瞬間硬直した俺たちを見て、周りはどれだけ不思議に思っただろう。

でも、一番びっくりしてるのは、多分俺らだ。

「そんなこと、ないっすよ。」

 一言そう言って、カズの方に向き直った。



 そう、こんなもんなんだ。



どんなに見とれるほど綺麗な人だったとしても、所詮は女ったらしとか、頭よさそうに見えるだけでそうでもなかったり。

 場所もわきまえずにワイワイ騒ぐような。節度もなくて。

 どんなに俺が想像の中で美化したって、そんなすばらしい人間なんか、いない。

少し気になってたヤツが一瞬でどうでもいいヤツに変わる。これが現実。



「カズ、行こうぜ。」

 カズが食べ終わったのを確認して早々に席を立った。

カズも状況を察してくれたのか何も言わずに立ち上がりトレーを持った。

 今振り返ったらあいつはどんな顔をしてるんだろう。また騒いでるんだろうか。


そんなことが頭をよぎったけど、振り返るのもどこかバカバカしくて、やめた。
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