ソラ
自分のことを『僕』と呼ぶ彼女は、長く伸びた髪を耳にかけて笑った。
でも、すぐにそれが愛想笑いだと分かるような、寂しい笑い顔だった。

「あれ、僕の父親に来たものなんですよ。 父方のお祖母さんが送ってくるプレッシャーです。」

彼女はなにかを背負ってるんだと感覚的に分かった。

「僕の父が海外で仕事してて、お祖母さんから毎日のように『父のような素晴らしい人になりなさい』って。」


オレはごく普通のサラリーマンの息子だし、彼女の気持ちはわからなかった。
オレの場合、家族から期待を寄せられることもなく19年間マイペースに生きて来た。

 期待を寄せられることは、そんなに大変なのか?


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