生まれたての放課後。
優しくて思いやりがあって、芯がまっすぐ通った宏くんは、きっと自分で自分を許すことはできない。
……だから、
わたしがとなりで許せたらいいと、思った、よ。
「………へ、」
言い切ってから見ると、宏くんは顔半分うずめたマフラーから覗くふたつの目を、数回、ぱちくりとまばたかせた。
「…………」
………言ってしまった。
どうかどうか、はあ?って言われませんように。
反射的に閉じてしまった目をそろりと開くと、笑った目の宏くんの顔がうつった。
「茶倉は、優しいな」
やわらかい、笑顔だ。
つられて同じ表情になる。
「……ねぇ、宏くん」
今はまだ、17歳だけど。子供だけど。
きっとね。
大人になったとき“子供だったな”って笑える日が来るよ。
その時までに、冷えて凍えそうな思い出を、あっためていこう。
そんな思い出をつくろうよ。
………わ、わたしも手伝うよ。
「宏くんが、好きだから」