生まれたての放課後。
「ご、ごめっ! 渡辺くん!」
「ふはっ、なんでだよ。いーよ宏で」
「っ」
……笑った。
宏くんがわたしに笑った。あの、宏くんが。すごい。すごいことだ。
これは大事件だ。
「茶倉に存在ちゃんと知られてたーよかったーって思っただけ」
「! 知ってるよ!」
……知ってるよ。だって、宏くんだもん。
人気者で目立つ、宏くんじゃない。
「うん、俺も知ってたけどさ。初会話じゃん」
「へ……あ、うん!」
「よろしくな、これから」
その言葉に、なんて答えたのか覚えてないけど。
なんだかすごく気分が舞い上がったことだけは、覚えてるんだ。