クール女子と大泥棒が恋すると、




「すごい、すごいっ!!」


家を出てからずっとこれだ。

確かにうちに来てからも、外に出るのは初めてだからな……。



食料品を買い、袋を抱えて家に帰る。



途中、紗夜は花屋の前で立ち止まった。



「……千歳……。これ、買ってくれない?」


紗夜が指差したのは一輪のバラだった。



「……なんでバラなんて……。」


紗夜は優しく微笑み、話した。


「……白鳥の奥さまがいらないから、と言ってくれた花だった。

私にとっては初めて生で見た外の世界のもの。

綺麗で綺麗で、仕方なかったの。

他のお花も綺麗だけど、やっぱりバラが一番好き。」




白鳥での思い出を大切にしてるのか。

こいつは。




「……いいよ。買ってこい。」


紗夜に金を渡すと、嬉しそうに笑った。








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