クール女子と大泥棒が恋すると、
「薔薇の花言葉、知ってる?」
「いや……」
「『愛』。」
思わず伊緒を見上げる。
相変わらずの無表情で、俺を見ていた。
でも、傘を座る俺の方に傾けていて、肩が少し濡れている。
『私が愛してあげる』
なぜか紗夜と伊緒の言葉を思い出した。
愛するなんて大層なことを言って、
と
紗夜に言われたときは思ったけど、
こんなに身近に『愛』はあるんだな。
「ククッ……」
突然笑いだした俺に伊緒は顔を歪める。
「お前がいてくれてよかった。」
「ハ!?」
さっきフッたばっかの伊緒にこんなこと言うなんて、
どんなチャラ男だよ!
でもそんな言葉で顔を赤らめてしまう伊緒を
いとおしいと思ってしまった。