クール女子と大泥棒が恋すると、
それでも、私のことは私として見てほしかったんだよ?
紗夜さんのことは忘れなくていいから。
私を好きになってくれなくても……いいから。
「空気が重たくなっちまったな。
本当は今日、一緒に夕御飯食わせてもらおうと思って電話したんだよ!」
「そうだったんですか……。
すみません……」
「いやいや!伊緒ちゃんは悪くねぇよ!」
その時、新見さんのポケットからバイブ音が聞こえてきた。
表示を見て、新見さんは私にウインクした。
おっさんのウインクにしては格好がついていた。
「もしもし、なんだ?」
『新見さん、今から家に行けますか?』
スピーカーにしてくれていて、
そのいとおしい声が私にも聞こえた。