クール女子と大泥棒が恋すると、
「千歳っ!」
俺の前で立ち止まり、息を整えている。
なんで……
「千歳、私を紗夜さんだと思って!!」
「ハ!?」
こいつ、何言ってんの?
それが嫌で「出てけ」って言ったんだろ!?
「いいから!」
困惑する俺に一喝し、伊緒は大きく息を吐いた。
「私は紗夜だよ?」
ああ……
ダメだ……
こいつは伊緒。
何がそんなに紗夜と似ているんだ?
容姿?
性格?
声?
違う。
似ているのは…………
この
いとおしさ。
俺は『紗夜』を強く抱きしめた。
もう二度と、どこかに行ってしまわないように。