クール女子と大泥棒が恋すると、
「悪いに決まってんだろ?
その髪、ほどけ。」
「何言ってんの。嫌だから。」
「ほどけ。」
千歳は無理矢理私の髪をほどいた。
「なんで……」
目から涙が出ているのがわかる。
髪はもうボサボサだ。
せっかく美月がやってくれたのに。
馬渕くんが誉めてくれたのに。
「馬渕としゃべんな。」
「やだ。」
「じゃあ今すぐ帰れ。」
「無理。」
千歳は私にも聞こえるように舌打ちをした。
「さっきからなんなの?意味わかんない。
千歳に私の行動を強要される筋合いはない。」
「っお前、いい加減にしろよ?」
千歳の顔が近付いてくる。
必死に顔を背けるけど、あっけなく顔の向きを元に戻された。
ギュッと目をつむる。
すると、耳元で優しく、「今日は帰れ。」
とささやかれた。
千歳は私の手を離し、その場から去っていった。
私はしばらく立ち上がれなかった。