こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
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「さて……これからどうするか、話そうか」
家に帰り着いてほんの少ししか経ってない時、お父さんがそんなことを言った。
お母さんの方を見ると、真剣な顔つきで。
勝手に自分の背筋もピシリと伸びてくる。
「エアリエル」
《……ちっ》
お父さんに睨まれて、渋々って感じでエアリエルが机の上に地図を開く。
自分が外に連れてかれて危ない目に会った時、お父さんは大分お怒りだったようでエアリエルを罰と称して眷属にした。
それを見てお父さんがすごい魔術師と言うことに初めて気がついた。
妖精などと契約を結ぶには、基本的には双方の同意が必要となる。一方の気持ちだけではできないのが契約なのだが、お父さんはその法則を無視してエアリエルを眷属——つまり従者にしてしまった。
そんなことが出来るのは人間の中には数える程しかいないと前に教わった。
だからちょこっとビックリした。
だって、お父さんが魔法陣を錬成したりだとか、見たことなかったから。
「俺達が今いるのがベアトリナ……ここだ」
お父さんが指差したのは、地図の下の方にある小国。
フィリアムが地図を見たのを確認すると、お父さんはすっと指を上へ走らせた。
「俺達はここに行こうと思っている」
そしてお父さんが指したのは“エスニアの森”。