こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
お父さんはそこで、毎日いつ死ぬか今日死ぬかと思いながら過ごしたそうだ。
だけど、そのままで死ぬには死に切れなくて、最後の能力を振り絞ったその先で出会ったそうだ。
「わ……わたしに?」
「そうだ。泣き声が聞こえて……そこに向かったらお前がいたんだ。オロオロしながら抱き上げたら、大きな眼で見つめた後お前ったら笑うんだよ」
お父さんはその時のことを思い出しているようで、スッと目を細めた。
「銀の髪も美しかったが、一番目を奪われたのはその伝説上でしかいないピーコックの羽と同じ色の瞳だった……その目を細めて笑うお前がとても可愛くてな……放っておけなかった」
そんなこと言われるとなんだか恥ずかしくて、体を揺らす。
「だけど、俺一人じゃ何をすればいいか見当つかなくて途方に暮れていた時……ラナに出会った」
「お母さんに?森の中で??ええ!?!?」
「ああ……ラナ代わりに話してくれ」
お母さんは頷くと、お父さんに代わって話し出した。
「お母さんはね、“森守(もりもり)”の一族に生まれたの……聞いたことある?」
首を縦に降る。
「ノームがあそこの森の中で暮らす一族がいるって……でも御伽噺だとばかり……」
「ふふっノームが全てを知るって本当なのかもね」
お母さんは一頻り笑うと。
「あそこの森にはね、本当に神様がいるの……それを守るのが森守の役目。私達は一生をそこで暮らす」
本当に神様がいる——?
とんでもないことを言い出すお母さんにフィリアムはポカンと口を開けた。