こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
「そこでの私の役目は祭壇を守る巫女だった……でもね、近くで泣き声が聞こえたの。神様を起こすからって子供の泣き声は禁物なのね。だからその泣き声の元へ行ったの」
そこであなたを抱くお父さんに出会ったの……、と呟いたお母さんはウットリとした表情で頬に手をあてた。
「一目惚れだったわ……」
え、そっち?
「だってあなたはとても愛くるしい姿をしていたんだもの……」
「え……一目惚れって俺じゃないの?」
お父さんが微かに悲しげな顔をする。
お母さんは勿論貴方も大好きよ、と言って軽くキスをする。
物心着いた時からずっとだから両親のラブシーンにはもう慣れた。
「それでね、大婆様に頼み込んだの、この人と一緒にこの子を育てたいって」
大婆様っていうのは、きっと森守の一族の一番偉い人なのだろう。
「私が一度決めたことを曲げないって知ってたからでしょうね、大婆様はすんなり許してくれたわ。元々巫女の役目も後ちょっとで終わっていたし」
「でも……なんで森から出たの?」
お父さんは姿を隠さなきゃいけなかった。だったら、そのまま森の中で暮らせばよかったんじゃ……?
その疑問に答えたのはお母さんだった。
「掟だったのよ……幼子は泣かなくなるまで外の世界で育てるっていうね決まりだったの」
それにお父さんも頷く。