こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
「さっきラナが言っただろう?赤子の泣き声は神様の眠りを妨げる……だから俺達は外に出た。そのまま戻るつもりはなかったんだがな……事情が変わった」
「事情って?」
「このままここで自衛の手段を教えるつもりだったんだが、つい数日前、天上の王が死んだ」
「……それになんの関係が?」
天上の王が死んだのと自分達がエスニアに行かなければならない繋がりが全く以って分からない。
確かに、天上の王が死んだということには驚いた。それはつまり、王の交代を意味し、次の王次第に寄っては人間は今以上に淘汰されるかもしれないのだから。
「問題は次の王の器がまだ見つかってないってことだ」
「次の王の器……?世襲制じゃないの??」
「違う。あの国は外見で王を決めるんだ。そう——銀の髪を持つ人間を……何故か昔から王が死ぬ直前に銀の髪の子供が生まれるんだ」
「ってことは、つまり……?」
「フィリアム、お前が天上人に捕らえられたら、お前は天上人の王にされる」
うそ……、と呟いてみるけど、それが嘘になることなんてない。
寧ろ実感が増すばかりだ。
「あっでも、私は天上人じゃないよ?」
突然思い当たった事実。
そう、人間であるフィリアムにとってこの話、関係ないはずだ。
それとも人間でもその王の器とやらは作用するというのだろうか。
そんな風に軽く考えているフィリアムにお父さんは頭を一度さげた。