こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
「あったでしょう?」
「うん……あった」
でもそれは村なんかじゃなかったよ、と言いたい。
「じゃあ行きましょうか」
「ああそうだな」
二人はフィリアムが混乱してるなんて気付きもせず、笑いながら前を行き、そして——
突如消えた。
「ええ!?」
まるで水の中へと消えるかのように……水の中へ?
フィリアムは今度は自分の意思で手を伸ばす。
そしてまた冷たいものに行き当たる。
今度は引かない。そのまま真っ直ぐに。
するりとそれの中に指が入り込んだ。
冷たい感触を境に、自分の指先が見えない。
今度は腕も足も、そして最後に顔も、その中にいれる。
耳元でとぷん、と音がした。
そして、次には、その中に広がる光景に息を呑んだ。
そこには本当に“村”が存在していた。
と言っても両手の指で足りるほどの戸数しかなかったが。
どの家も質素な作りで、せいぜい一部屋二部屋しかなさそうだ。
しかも人がいない。どの家ももぬけの殻だ。
「フィオ?どうしたの?」
「……ぁ」
思ったことをそのまま口に出そうとしたけれど、首を振ってから辞める。
「今、行く」
だいぶ前の方を歩く二人の背を追いかけた。