こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—




「行ってらっしゃい」


 続いて立ち上がったフィリアムにお母さんはそう言う。


「いってきます」



 ——それがお勉強の時間の合図だった。




 家の外に出るとお父さんの背中を追いかける。

 そして、開けた場所に出るとフィリアムは翼を広げた。
 お父さんの手に寄って封じられていた翼は、この森に来たその日に解放された。

 今では自在に出し入れできる。
 実際はそんな表現で表せないのだけれど、便宜上出し入れする、とお父さんは言った。


「スムーズにできるようになったな」


 褒められたのが嬉しくて思わずえへへと笑う。


「さてと、やりますか?」

「はーい!」


 優羽は昨日から変わらずそこにあった長剣を、地面から引き抜く。

 お父さんも同様に地面から剣を引き抜く。


「準備運動はもういいのか?」

「十分だよ〜」


 二人の会話は至極和やかなもので、今から斬り合いを行うような者通しがする会話ではなかった。


 にっこり笑った二人は同時に跳んだ。


 触れ合う剣撃はまるでステップのように、高い音を鳴らしては離れ、そしてまた鳴らす。
 フィリアムは一瞬の隙をついてお父さんの持つ剣を弾き飛ばした。
 好機は逃してはならない。それがお父さんに最初に教わったこと。
 自らの剣をガラ空きのお父さんの首目掛けて突き出した。


 しかし、その突きはあえなく弾かれる。

 なんで、と目を見開く前にヒヤリとした感触が首に触れた。



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