こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
そして一本目の弓は見事狙っていた鹿の首を貫いた。
奇妙な声を挙げた鹿に驚いた他の二頭は駆け出そうとする。
その内の一頭の後脚に二本目が刺さった。
鹿はそれでもそこから離脱しようと、走ろうとする。
エルダンはもう一度構えてすぐ放つ。
その矢はびっこを引いていた鹿の、頭を貫いた。
エルダンはフィリアムに来い来いと一度手招きしてから鹿の方に走っていく。
フィリアムもそれを追いかけて走る。
フィリアムが追いついたのは、エルダンが短刀を振り上げた時だった。
それは正確に急所に刺さり、もがいていた鹿はそれきり動かなくなった。
ふわりと白い光が鹿の体から溢れ出す。この光景を見る度にフィリアムは自然と頭を下げるのだった。
エルダンは首に刺さった弓を抜き取ってから右肩に担ぎ。もう一頭の鹿の方に歩み寄る。
頭を撃ち抜かれた鹿は最初から動かなかった。その鹿からも弓を抜く。そして左肩に担いだ。
「今夜は御馳走だな」
それが狩りの終了の合図だった。
「やったぁ」
フィリアムは喜びの声を上げる。
御馳走なんて言われれば嬉しいものだ。
そこでエルダンが微妙な顔をしているのに気付く。
「どぉしたの?」
「……できればこのまま帰りたいんだけど、いいか?」
「あ、そういうこと?」
エルダンが言いたいのは探検することができなくなったということだろう。
フィリアムは一瞬考えた後、にっこりと笑う。