こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
「別にへいき!私なら一人でだいじょうぶ!」
「それはダメだ」
「なんで??」
いくら食い下がっても、ダメとしか言わないエルダンに段々とフィリアムの顔は険しくなる。
エルダンはそれに気付いて困り顔だ。一度溜息を着くと、実はなと切り出した。
「森の奥には妖魔が棲んでるんだ、一人で行くには危険すぎる」
「別にだいじょうぶだよ?」
「ばっか!そんなとこにフィリアム一人で行かせたりなんかしたらお前の親父に俺が殺される……」
エルダンは自分の肩を抱いて震えた。
「お父さんに何されるの?」
「確実に泣きはみるな……」
「そっか……」
フィリアムは残念そうな顔を浮かべる。
自分のわがままのせいでエルダンに可哀想な目に合わさせるわけにはいかない。
「分かった、今日はもう帰ろう?」
「ああ」
エルダンはよかったと心の中で呟くと、連れ立って歩き出す。
暫く歩いたところでそれにしても、とエルダンは後ろを素直に着いてくるフィリアムの顔を盗み見る。
フィリアムは折角の探索がなくなったというのに終始和やかだった。