こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—




 ほんとは早く次のステップに進みたい。
 早く魔法を扱いたい。


 だから妖魔を探す。
 それをやっつけるために。


 魔法陣を使って妖魔を倒せれば、お父さんも認めて、きっと次の段階に移行させるだろう。

 それに、何より驚かせたいのだ。
 自分の娘はここまでできるのだと。


「これでお父さんに認めさせてやるんだから〜」


 フィリアムはお父さんの反応を妄想してクスリと笑いをもらした。



 その笑いは一瞬の油断を招き、笑い声は途中で途絶えた。


 ——硬いものが当たった音がした。

 自分の脇腹あたりで。


 目をやれば、赤く光る四つの点があり、僅かに届いた月光に、白く反射する鋭きものが見えた。


 赤浪(せきろう)だ。

 蛇の如き体を持ちながら、目で獲物を捉える。
 動きは恐ろしく早い。


「きゃああああ」


 悲鳴をあげて、背を見せる。

 それが命取りだなんて思う余裕はない。


 赤浪は這うような不気味な音を立てて追いすがり、そして。


「きゃああああああ……——なぁんてね♪」


 空で体を捻り、凶悪な牙から逃れると、潜ませていた剣で斬り臥せた。

 初めて肉を斬る感触に一瞬手が怯む。だが、ここでやめるわけにはいかない。
 だって、助けなんてない、ここは夜の森。ここで殺らなきゃ自分が殺られてしまうのだから。
 


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