こんな能力なんていらなかった—鳥籠の中の鳥は愛を詩う—
「『百年に一度花を咲かせるユカシアの花』かぁ。ふーん」
ツンと目の前で美しく咲く真紅の花を突つく。
「こーんなに綺麗な花なのになぁ……。戦争の名前にしちゃうなんて勿体ないなぁ……」
《だけど、分かりやすい》
ついーと自分の右肩に腰掛けたそれを見て顔を綻ばせる。
「今日もねむたそうだねぇ」
《気怠いだけ……僕たちに眠りなんて必要ない》
「え!?ねむくなんないの??」
《生きていない僕たちに眠ると言う機能はついてないのさ》
「……そういうものなの?」
《そういうもの》
「ふーん」
さぁっと風が吹いて、ユカシアの花が揺れる。
——世界の形を大きく変えたユカシア戦争が、終わりを迎えてから今年で丁度百年
争ったのは、翼を持つ者と持たざる者
翼を持つ者の王がある宣言を発したことがきっかけだった——
「フィリアーム!」
「あっ……」
お母さんの自分を呼ぶ声にしまったと冷や汗を垂らす。自分のことを“フィオ”って呼ばない——それは、どれだけ怒っているかを示す指標だ。
「みーつけた」
家の裏の草原に素早く身を隠すもお母さんには関係なく。
「帰るわよ」
「……ふぁい」
フィリアムはおとなしくお母さんに首根っこを掴まれたまま、家のドアをくぐり抜ける。